こんにちは、まお太です。
高校時代から紅茶好きが高じて、紅茶専門店に長年勤務していました。
今回はよく耳にするけど意外と意味を知らない人も多い、『セイロンティー』って何だろうという疑問を解決するお話です。
セイロンティーって何のこと?
紅茶に興味を持つと、聞きなれない名前がたくさん出てきますよね。
その一つが『セイロンティー』
この「セイロン」とは、現在のスリランカ共和国の旧国名です。
スリランカ共和国が、イギリスの植民地から自治領として独立した当時の国名が「セイロン」です。
その後、1972年に「セイロン国」から「スリランカ民主社会主義共和国」に国名が変更されました。
つまり『セイロンティー』というのはセイロン=スリランカで生産された紅茶全体を指します。
スリランカは小さな島国ですが、世界で一二を争うほどの茶葉の輸出国なのです。
実際に日本へ輸入されている茶葉は、その6割がスリランカ産なほどです。
スリランカでは生産した茶葉の96%を輸出しており、とても重要な産業の1つです。
スリランカ共和国には紅茶局(Sri Lanka Tea Board)という政府機関も有って、国内の紅茶産業の管理や茶葉の品質の認定などを行っています。
『セイロンティー』は商標登録もされています。
セイロンティーの始まり
昔イギリスの植民地時代のセイロン国は、コーヒー豆の一大産地でした。
しかし「さび病菌」が猛威を振るい、コーヒーの木が殆ど全滅してしまいます。コーヒー産業が衰退するのを機に、コーヒーに代わって紅茶の木の栽培が試されるようになりました。
コーヒー農園で働いていたスコットランド人のジェームス・テーラーも、紅茶に深い関心を持つ一人でした。
彼は1867年キャンディ地区にルーラコンデラ茶園を開墾し、スリランカで初めて紅茶の大規模栽培に成功します。
これが『セイロンティー』の始まりです。
更にジェームス・テーラーは、セイロン国の風土に合った栽培方法や製茶技術の実験を繰り返し、製茶機械の開発を手掛け、製茶工場を建設しました。やがて努力が実を結び、ロンドンのオークションでテーラーの作った紅茶が高い評価を受けるようになったのです。
その後もテーラーは生涯を紅茶の研究に捧げ、「セイロンティーの父」と呼ばれました。
現在でもキャンディ地区の紅茶博物館にはジェームス・テーラーの遺品や当時の製茶機械等が展示され、その功績が称えられています。
小さな島国の大きな標高差が多彩な紅茶を生み出す
スリランカは雨季と乾季の有る亜熱帯気候に属しますが、国土の中央に2,500mほどの標高の山脈が有ります。
この山脈を挟んで北東側には11月~2月に貿易風、南西側には5月~9月に偏西風が吹くため、北東部と南西部で全く気候が異なります。
更に沿岸部の低い土地と、山脈の中腹部、そして山頂近くでは気温も大きく違います。
スリランカは北海道より一回りほど小さな島国ですが、この変化に富んだ気温差と気候が各地域で特色の違うバラエティ豊かな紅茶を生みだしているのです。
一般的に紅茶は茶葉の大きさでグレード分けされますが、セイロンティーは標高でも分けられています。
等級 | 標高 |
ハイグロウン(High grown tea) | 1200m以上 |
ミディアムグロウン(Medium grown tea) | 600m~1200m |
ローグロウン(Low grown tea) | 600m以下 |
一般的にハイグロウンは華やかな香りでしっかりとした渋味が有り、ローグラウンは香りは控え目でコクの有る濃厚な味になり、ミディアムグロウンはその中間の味となります。
セイロンティーの7つの紅茶
セイロンティーの主要銘柄はウバ・ヌワラエリヤ・ディンブラ・キャンディ・ルフナの5つでしたが、風味の違い等から新たに2つの産地が独立し、現在では7つが主要銘柄とされています。
ウバ
ダージリン、キーマンと並んで世界三大紅茶の1つ。
標高1200mで生産されるハイグロウンティー。
華やかな香りがあり、上質な物はその香りをバラやスズランに例えられます。しっかりとした渋味が有ります。
赤みがかったオレンジ色の美しい水色(すいしょく)を持ち、カップに注ぐとゴールデンリングと呼ばれる金色の輪が浮かび、とても綺麗です。
美しい水色を楽しむためにストレートがおすすめとされますが、ミルクもとても合います。
7月~9月頃にクオリティーシーズンを迎え、市場に出回るのは秋からです。
ヌワラエリヤ
標高1600mから2000mというスリランカで最も高い産地のハイグロウンティー。
黄色味を帯びた淡いオレンジ色の水色で、華やかな香りと上品な渋味が有り、その淡く美しい水色と繊細な味から「紅茶のシャンパン」とも呼ばれています。
緑茶に似た青みのあるすっきりとした味わいで、まずはストレートで試して欲しい紅茶です。
和菓子にもよく合います。
ヌワラエリヤの茶園は余り多くない為、実は生産量が少ない希少な紅茶。
クオリティシーズンは12月~2月。ウバが秋ならヌワラエリヤは春を告げる紅茶です。
ディンブラ
標高1200mから1600mで生産されるハイグロウンティー。
オレンジがかった鮮やかな紅色で、ほんのり甘い香りと味のバランスがとても良いです。
渋味は有りますが、まろやかで軽やかなので渋味の苦手な人も飲みやすく、ストレートでもミルクでも美味しく飲める優等生な紅茶です。
アイスティーにした時クリームダウン(白濁すること)しにくいと書かれている事が多いですが、茶葉によってはしっかりクリームダウンしてしまいます。
ディンブラは茶園が多く生産量もかなり多いので、一口にディンブラといっても様々な物があるのです。
クオリティーシーズンは1月~3月。
キャンディ
標高600mから1200mで生産されるミディアムグロウンティー。
ジェームス・テーラーがこの地区で最初に紅茶の大規模栽培に成功した事から、セイロンティー発祥の地として有名です。
年間を通して温暖な気候で、香りや味も同様に甘くまろやかで親しみやすい紅茶です。
渋味が少なくクセも少ないので飲みやすいですが、その反面個性がやや弱いとも言えます。
アイスティーにも向いています。
クオリティシーズンは2月から4月。
ルフナ
600m以下で生産されるローグロウンティー。
水色は深い赤褐色。
コクが有り渋味は少ないミルクティー向きの紅茶です。
モルティー香と呼ばれる黒糖のような、ほんのりとスモーキーな甘い香りがします。
日本での認知度は低いですが、渋味が苦手でミルクティーが好きという人にお勧めな紅茶でしょう。
私自身、試飲のみでちゃんと味わえていないので、良さそうな茶葉を見つけたら購入してみようと思っています。
ローグロウンでは年間を通して生産が行われていて明確なクオリティシーズンは有りませんが、だいたい1月~3月、8月~10月に質の良い物が出ると言われています。
ウダプセラワ
ヌワラエリヤとウバの間のエリアで、新たに独立した産地のハイグロウンティー。
収穫時期や茶園の場所によって、ウバっぽかったりヌワラエリヤっぽかったりもします。
上質なウダプセラワはバラのような香りとかすかなメントール香が感じられます。
味も渋味とコクのバランスがちょうど良く、水色は澄んだ紅色。
ストレートでもミルクを合わせても美味しい紅茶です。
クオリティシーズンはウバに近いエリアでは8月から9月、ヌワラエリヤに近いエリアでは1月~2月になります。
サバラガムワ
ルフナから新しく独立したローグロウンティー。
広大なルフナでの生産量が増大したため、南をルフナ、北をサバラガムワに分割されました。
少しほろ苦いキャラメルのような、パンのような甘い香りと深いコクが特徴です。
ルフナよりスモーキーな香りが少ないので、ストレートでも飲みやすい紅茶です。
しっかりした味わいなのでチャイにも向いています。
ルフナと同様に年間を通して生産されます。
まとめ:豊かな個性とリーズナブルな価格
このようにセイロンティーと一口で言っても、それぞれ異なる環境で作られた個性の違う紅茶を指します。
- セイロンはスリランカの旧国名である。
- 『セイロンティー』はスリランカで生産される全てのお茶を指す。
- 独特な地形による温度差と気候の違いで、個性豊かな紅茶が生産されてる。
補足:セイロンティー全体的に価格が抑えられたコストパフォーマンスの良い紅茶が多いです。
紅茶に興味を持って、これから色々と紅茶を飲んでみようという方に特におすすめします。