高校時代からのから紅茶好きが高じて、紅茶専門店に長年勤務していました。
勤務時代に友人たちから「紅茶って種類が多くて、メニューを見ても何が何やら分からない」そんな声をよく聞きました。
確かに紅茶専門店のメニューには聞いたことがない名前がたくさんあるし、ダージリンだけでも何種類もあったりと、とっつきにくいですよね。
そこで紅茶の種類について、このブログでも少しずつ取り上げていこうと思います。
まず紅茶には非常に大きく分けると、ブレンドティーとシングルオリジンティーの2種類があります。
最近はフレーバードティーの人気も高いですが、ひとまずそれは置いておいて。
今回はブレンドティーとシングルオリジンティーのお話です。
紅茶は農産物である、だからブレンドが必要
まずブレンドティーと聞くと、アッサムとディンブラ等の違う茶葉を混ぜて作ったオリジナルブレンドを想像する人が多いと思います。
例えば、多くの店で見かけるイングリッシュ・ブレックファーストやアフタヌーンブレンド。
これらは定番のブレンドティーで、楽しんで貰いたいシチュエーションに名前が由来しています。
イングリッシュ・ブレックファーストは、イギリスで朝食時に飲まれているミルクと砂糖をたっぷり入れた紅茶をイメージしたブレンド。
朝飲む想定ですので香りは少し控え目、しっかりコクが有りミルクを入れることで渋味もまろやかな旨味になる人気のブレンドです。
そしてアフタヌーンブレンドは午後のお茶の時間に飲む紅茶のイメージ。
ケーキ等と一緒に楽しむように、香りを重視しストレートでもミルクでも美味しいブレンドです。
お店によっては、華やかな香りを出すためにアールグレイやジャスミンティーをブレンドする場合もあります。
他にも、そのお店や会社の名前、地名を冠したブレンド名などたくさんの種類が有ります。
上の画像はリプトンの有名なブレンド、エクストラクオリティセイロン。通称青缶とも呼ばれています。
これもヌワラエリヤをベースにセイロン(スリランカの旧国名)の茶葉のみでブレンドされたブレンドティーです。
そして1種類の茶葉のみに見える商品も、実は殆どがブレンドティーだったりします。
例えばディンブラやアッサム、ニルギリといった茶葉の種類のみで、茶園の名前の記載がない紅茶は基本的にブレンドティーです。
トワイニングのダージリン、こちらもブレンドティーと考えられます。
ではダージリンやディンブラといった1種類の茶葉のみの紅茶ではどういったブレンドが行われているのでしょうか?
紅茶は農産物です。当然、毎年の出来にばらつきが有ります。
農産物ですので同じ地方でもあの茶園は今年すごく出来が良いけど、別の茶園では出来が今一つだったなんてことが有ります。
野菜や米も今年は糖度が高くて甘くて美味しいとか、暖冬で不作だったりするのと同じです。
更に一般的な紅茶の収穫時期は春から秋にかけての長期間なので、1年の間でも違いが出ます。
農産物としては当たり前の事なのですが、購入する側からすると同じ紅茶を選んだつもりなのに、購入時期によって品質がバラバラなのは非常に困りますよね。
そこでブレンド作業を行い、別の茶園だったり年度の違う茶葉を混ぜることで、品質にばらつきが出ないように調整して販売されています。
これによって、私たちは毎年ほぼ同じ品質の紅茶を安定した価格で購入出来るのです。
ちなみにブレンドは原産国で行われる場合も多いです。
こちらもその地域の茶園ごとの出来不出来をならして、一定以上の水準に到達させる目的で行われます。
そうしてブレンドされた茶葉を、買い付けたメーカーが更にお店の味に近づけて再ブレンドしたりするのです。
尖った個性のシングルオリジンティー
シングルオリジンティー(もしくはシングルエステート)とは、名前の通り単一の茶園の紅茶です。
商品名にダージリン(2021年〇×茶園)等と茶園名が表記されている物がシングルオリジンにあたります。
紅茶専門店のメニューでは、よく『シーズンティー』として載っています。
他の茶園の茶葉と混ぜないため、その茶園の個性が強く出た紅茶が多く、同じ品種でも茶園ごとに飲み比べると味わいがかなり違って面白いです。
シングルオリジンは基本的にどのメーカーでも単体で商品に出来るだけの質の茶葉を厳選している筈ですが、ブレンドティーに比べて個性の強い茶葉が多いです。
ブレンドが万人に楽しんでもらえる紅茶を対象に作られているのに対し、シングルオリジンはその尖った個性を楽しんでもらうマニア好みの紅茶と言えます。
一般的にシングルオリジンティーはブレンドティーよりも高価ですので、試飲をするか少量でお試しする事をお勧めします。
最良な方法は、シングルオリジンもブレンドも紅茶専門店で味わって美味しかったものを購入する事です。
ティーブレンダーとは
『紅茶は農産物である、だからブレンドが必要』で書いたように、シングルオリジン以外の全ての紅茶は、販売される前にブレンドされています。
では紅茶メーカーの命ともいえるブレンド作業はどんな人が行っているのでしょう?
紅茶のブレンド作業を担当する人のことを「ティーブレンダー」あるいは「ティーテイスター」と呼びます。
原産国と紅茶を輸入している紅茶専門店や大手企業では、必ずこのティーブレンダーが居ます。
ティーブレンダーは数百ある原茶(商品化される前の茶葉)の鑑定を行い、それぞれの茶葉の個性を見極めた上でブレンド作業も行います。
その為、ティーブレンダーには長年の実務経験と鋭敏な嗅覚と味覚が求められます。
ブレンド技術に力を入れるイギリスでは、ティーブレンダーはワインソムリエと同様に喫煙・飲酒・刺激物を避けるなど非常に厳格な制約が有るほどです。
イギリスには、祖母の代から同じメーカーの同じブレンドを飲み続けているといった、国民に根付いた紅茶文化が有り、毎年出来の変わる原茶の中から顧客が求める『いつものあの味』を組み立てなければいけないからです。
非常に高い技術を求められるティーブレンダーは、紅茶メーカーの屋台骨を支える重要な職業です。
またティーブレンダーは時代に沿った新しいブレンドや、フレーバーティーの着香作業も行います。
そういう意味で、新しい紅茶を生み出すクリエイティブな職業とも言えます。
まとめ:シングルエステートティー以外の紅茶はすべてブレンドティー
今回のお話のまとめは次の2つです。
シングルオリジンティとは『2021年〇×茶園』などの記載のある、一切混ぜていない単一茶園の紅茶。
それ以外は全ての紅茶がティーブレンダーによって高度な技術でブレンドされたブレンドティー。
紅茶を選ぶ時に少しでも参考になりますように。