縁あって伯母宅の玄関にビオラを植える事になりました。
ビオラは日光が大好きな日向を好む花ですが、残念ながら伯母宅の玄関は半日蔭に該当する場所でした。
前回の記事ではパンジーとビオラのどちらが半日蔭の庭できれいに咲くかを検証しましたが、今回は
5年間半日陰で試行錯誤しながらビオラを植え続けて掴んだ栽培のポイントをご紹介します。
ちなみに当ブログでは半日蔭を下記の表の条件で考慮しています。
日向 | 半日陰 | 日陰 | |
直射日光が当たる時間 (1日あたり) | 6時間以上 | 2時間以上 またそれ以外の時間は明るい日陰 | 2時間未満 |
種子と苗どちらを植えるべきか
いざビオラを植えようと考えたとき、種子と苗どちらを植えたら良いのか悩む人も多いと思います。
まず販売時期ですが種子は1年中、苗は10月中旬頃から販売されています。
もし半日陰に植える予定であれば、迷わずポット苗を購入しましょう。
理由は、半日陰では種子から充実した苗に育て上げるのが非常に難しいからです。
まず種子を植えて発芽までの期間は日陰で大丈夫ですが、芽が出て以降は成長に十分な日光が必要になります。
この十分な量の日光が、半日陰では確保出来ません。
日光不足になると、根がきちんと育たず生育不良で弱々しい苗になります。
私自身も種から栽培してみましたが、土から上に出ている葉や茎はある程度育っているように見えても、根の成長は市販の苗に圧倒的に負けていました。
根が十分に育っていない場合、その後の成長が全て遅れていき、最盛期の花数が著しく減ってしまうのです。
それに比べ市販されている苗は、園芸店や専門の種苗会社が適切な環境で栽培しており、根も充分に成長しています。
元々日光が大好きなビオラにとって半日蔭は最適な環境ではありません。
そのハンデを埋めるに、日光以外の環境を出来るだけ最適なものにする事が重要です。
半日陰でも春に素晴らしい花を咲かせるためには、根が十分に育った元気な苗を購入するのが最も確実な近道です。
ビオラを美しく咲かせる用土
ビオラに適した用土は赤玉土(小粒)6、腐葉土3、堆肥1の割合です。
しかし、よほどたくさん植えるのでなければ市販の草花用の培養土で十分です。
園芸店やホームセンターで「花の土」や「花と野菜の土」などの名称で販売されています。
大体そのまま使用して差し支えないですが、赤玉土(小粒)を別途購入して1割か2割ほど混ぜ込むと水はけが良くなりお勧めです。
そして最も重要な事ですが、半日蔭での栽培は必ず新しい用土を使いましょう。
古い土がダメな理由は大まかに4つです。
- 以前の栽培で発生した病害虫や細菌が潜んでいる可能性がある。
- 土の粒が崩れてしまっているため保水力や水はけが悪い。
- 成長に必要な栄養素や微生物が欠乏している。
- 前に植えていた植物の根や種子などゴミが多く含まれている。
これらをクリアして新しい用土と同等にリサイクルするためには広い場所と道具、かなりの労働時間が必要になります。
具体的には
- ふるいにかけてゴミを丹念に取り除く。
- 広い場所に土を広げて乾かす
- 熱湯や日光で殺菌消毒する。日光で消毒する場合黒いごみ袋等に入れて広げ、十分な直射日光を当てて数日間天日干しする必要がある。
- 水はけや保水力の改善のため土壌改良剤・腐葉土・たい肥などを混ぜる。
- 栄養を補充するため、置き肥を混ぜ込む。
毎年かなり大量の鉢や花壇を育てている場合や、日光の十分当たる広いスペースが確保できるといった場合を除き、新しい用土を用意する事をお勧めします。
古い土は自治体ごとに対応が違いますが、一度に大量でなければ燃えるゴミとして回収してくれる場合が多いです。お住いの自治体で確認してみてください。
また大型園芸店やホームセンターでは引き取ってくれるところもありますので是非活用しましょう。
もし深型の鉢を使っていて全部入れ替えるのが勿体ないという場合は、底の土だけを残し上部に新しい用土を入れると良いでしょう。
目安として苗ポットが収まる深さまでは新しい用土を使用したほうが良いです。
花壇の場合は、苗ポッドの一回り大きい範囲を新しい用土と入れ替えます。
繰り返しになりますがビオラは日光が大好きです。半日陰で育てるためには、日光以外の要素を出来るだけビオラにとって良い環境に整えてあげることが重要です。
水やりは冬に少なく春に多く
半日陰ではどうしても日光が不足気味になります。特に12月から2月中頃までは気温も低い為、土が水分過剰になりやすいです。
この時期、必要以上に水を与えすぎると徒長してしまう場合があります。
徒長とは、足りない日光を求めて植物がひょろひょろと縦に長く伸びてしまう現象です。
徒長してしまうと見栄えが悪く、細い茎が頼りなく伸びてしまうため風で折れてしまったりします。
その為、土の表面の色を見て水やりの頻度を調節します。
湿っている土は濃い茶色で、乾くにつれて白っぽい色に変化していきます。
色で判別が付かない場合は表面の土に触ってみます。
しっとりと濡れた感じの間は水やりは必要ありません。
表面がぱらっと乾いてから、鉢底の穴から水が流れるくらいたっぷりあげましょう。
半日蔭であれば冬の間はだいたい数日に1度で大丈夫です。
春になると花が次々咲き、日光も強くなる事で必要な水分量が多くなり土も乾きやすくなります。
そのため花が増えてきた段階で土の乾きに注意して水やりの頻度を増やし、最盛期には毎日水やりするようにします。
水やりの時間は午前中が最適です。
理由は植物が午前中に最も活動的になることと、日中で土の余分な水分が抜けて気温の低くなる夜間の凍結が起こりにくくなる為です。
特に2月は寒波が戻り積雪や霜が下りることもありますので注意が必要です。
薬剤は使いやすいオルトラン粒剤がおすすめ
ビオラは気温の下がった11月頃から植え付けます。殆どの病害虫は気温が20℃以上で活動を始めるので、植え付け当初に病害虫の心配はさほど有りません。
苗を植える際に、土に害虫対策の薬剤を予防的に混ぜ込み、それ以降説明書の記載どおりの期間で散布していくだけで春までは大丈夫です。
私のおすすめ薬剤はオルトラン『オルトラン粒剤』です。
オルトラン粒剤は、その名の通り固形の粒状の薬剤です。日々の水やりでゆっくりと土の中に溶けていき、植物がその成分を吸い上げる事で効果を発揮します。
効果が出るのに1週間程かかりますが、その後1か月効果が持続します。
少し気温が上がると活動し始めるアブラムシに効果覿面なので、1か月毎にしっかり撒いて駆除しましょう。
最初は植え込む土に混ぜ込み、2回目以降は株の根元から少し離した周辺にぐるりと囲むように撒くか、2~3か所に分散して撒くようにします。
オルトランには色々な種類がありますが、『GFオルトラン粒剤』と書かれた青いパッケージの薬剤がおすすめです。
水和剤や液剤もありますが、希釈などの手間がかからず取り扱いが容易なので粒剤をおすすめします。
赤いパッケージと青いパッケージがありますが、青はバラの天敵コガネムシの幼虫にも対応しています。
ビオラ以外の鉢植えにも使用するのであれば青いオルトランが便利だと思います。
ビオラは暑さに弱く、気温が上がり病害虫が活発になる4月末頃には徒長し倒れてしまったり枯れ始めます。
ですので自然に枯れるまで定期的にきちんとオルトラン粒剤を与えていれば、病害虫には殆ど悩まされることはないでしょう。
元肥と追肥を必ず与えましょう
肥料には元肥と追肥があります。
植え付け時に土に混ぜ込む遅効性肥料を元肥といいます。即効性はなく、水やりのたびに少しずつ地中に溶け出し長期間に渡ってゆっくりと作用します。
市販の培養土を使用する場合は、元肥が既にブレンドされているなら更に元肥を加える必要はありません。
ビオラの植え付け時期は秋冬で低温でゆっくり成長するためこの時期に余り多くの肥料は必要ではありません。逆に肥料を多く与えすぎると場合によっては苗が枯れてしまったりします。
そして成長に合わせて追加で与える肥料を追肥といいます。
おすすめはマグアンプK中粒で、元肥として与える場合は土に混ぜ込み、追肥として与える場合は根元から少し離した場所に数か所に分けてばらまくだけでお手軽です。
効き目は1年なので、一度与えれば大丈夫です。
ただビオラやパンジーといったたくさんの花をつける植物は肥料をどんどん消費するので、春になって花をたくさん咲かせ始めたら薄めの液肥を与えた方が良いでしょう。
花がらはとにかく摘む
ビオラは多花性で1株が大きく横に広がりたくさんの花を咲かせます。
1つ1つの花は2日~3日ほどで散って、次々と新しい蕾が大きくなります。
花弁が散った後のガクの部分をそのまま放置しておくと種子をつけ、花を咲かせるための栄養をどんどん横取りしてしまい、株自体が弱ってしまいます。
これを防ぐためには、散り始めた花がらを摘んでいかないといけません。
ビオラは強健で栽培の手間は殆どかかりませんが、最盛期の花がら摘みをしっかり行う事で美しい花を長期間楽しむことができます。
補足:半日陰での色の映え方
ビオラは花色が豊富です。
原色に近い明るめな色だけでなく、最近はアンティークカラーやダークカラーも増えてきました。
個人的にアンティークカラーが大好きで最初の年は多めに取り入れました。
しかし半日蔭に植えてみると、アンティークカラーやダークカラーの抑えた色味は想像していたより暗く見えてしまいました。
逆に白や黄色といった彩度の高い明るめの色は、半日蔭でも明るくレフ板のような効果があり周囲の花色も綺麗に見せてくれます。
壁や花壇の色にもよりますがダークな色味の花は全面に使うのではなく、まずは部分使いにしてバランスを見るほうが良いかもしれません。