数年前、伯母宅の玄関前にパンジーを植えて欲しいと頼まれました。
冬から春にかけてお庭に彩りを添える1年草、パンジーとビオラは、豊かな花色と育てやすさから多くのガーデナーがお庭や玄関で栽培している大人気のお花です。
北西向きで半日陰の玄関前を明るい雰囲気にしたいという要望でした。
そこで実際にパンジーとビオラを植えてみると、性質が似ていると言われる両者の違いが色々と見えてきました。
今回は、その栽培体験をもとに、パンジーとビオラの特徴や半日陰での育てやすさ、どちらがより適しているのかについて詳しくまとめました。
半日陰でよく育つお花を探しているかたは是非参考にしてください。
パンジーとビオラは実は同じお花
園芸店でパンジーとビオラを見比べても、違いがわかりにくいかもしれません。実は、両者は基本的には同じお花です。
パンジーとビオラは、19世紀頃、野生のスミレとの交配品種から誕生し、花の大きさによって呼び名が分かれるようになりました。
一般的には、花径が5センチ以上ならパンジー、2~4センチならビオラと呼ばれることが多いのです。
また咲き方にも若干違いが有り、多花性で鉢から零れるようにたくさんの花をつけるビオラに比べると、パンジーは大輪で花数が少なめです。
そして日陰ガーデナーにはとても重要な事ですが、ビオラのほうが若干の耐陰性が有ります。
パンジー | ビオラ | |
花数 | 少なめ | 多花性で生い茂るようにたくさん咲く |
大きさ | 5㎝以上 | 2~4㎝くらい |
日光 | 陽当たり大好き。耐陰性はあまり無い | 陽当たり大好き。ただし耐陰性があり、 ある程度日光があれば成長可能 |
西日しか当たらないスペースでの栽培チャレンジ
植え付け前に、栽培スペースの環境を確認することにしました。
伯母宅の西北西向き玄関先スペース。向いや隣家の影響で、冬の午前中はほとんど日が入らず、正午から15時の約3時間だけ直射日光が差す環境です。
植物は午前中に最も光合成が活発なので、理想としては夕方より午前中に日光が当たるほうが効率よく成長できます。しかし当たらないものは仕方がない。
ちなみに日向・半日陰・日陰の違いは大体こんな感じです。
日向 | 半日陰 | 日陰 | |
直射日光が当たる時間 (1日あたり) | 6時間以上 | 2時間以上 またそれ以外の時間は明るい日陰 | 2時間未満 |
他にも半日陰の定義で『木漏れ日程度の日差しが一日当たる場所』というのが有るのですが、これは個人の感覚に左右されやすいので分かりやすく直射日光で考えることにします。
これら条件を照らし合わせると伯母宅の玄関の場合、西日のみの半日陰でした。
5年間の成長記録
初年度は、大輪のパンジーと愛らしいビオラを選び、11月後半に大きめの鉢やプランター、花壇に植えました。成長の様子は以下の通りです。
パンジー | ビオラ | |
12月中旬~1月 | 植えた直後は大きな変化はなく、1株あたり約2輪の花が咲く。 | 徐々に横に広がり、成長の兆しが感じられる。 1株当たり5輪程度の花を付けている |
2月 | 1株あたり3輪に増え、少しずつ横展開が始まる。 | 1株あたり10輪ほどに花が増え、プランターや花壇全体が華やかに彩られる |
3月~4月 | 植え付け時よりも一回り大きく成長するが、覆いつくすほどではなく土が部分的に見えてしまう。 | 2回り以上に成長し、花が密集して土がほとんど見えなくなるほどに。 |
近くに寄って見ると、パンジーの大きな花はひとつひとつが美しく映りますが、離れた場所から眺めるとビオラの群生が圧倒的な存在感を示します。
ただ玄関先や庭のお花は、近くよりは少し離れたところから引きで見るほうが圧倒的に多いんですよね。
そこで改めて離れたところから観賞すると、ビオラはたくさんの花が付き色鮮やかで見ごたえがあります。
それに対しパンジーは花より緑が目立って心持ち寂しい印象になってしまいます。
このあと数年にわたり別のパンジー品種も試みましたが、最終的には花数の多いビオラに軍配が上がり、パンジーは伯母宅玄関から姿を消す結果となりました。
なぜ半日陰ではパンジーが苦戦するのか
どちらも元来日光を好むお花ですが、半日陰で育てる際には以下の点が影響したと考えられます。
- 耐陰性の違い
ビオラは多少の日陰なら対応でき、11月後半から12月の、より少ない日照時間でも成長が止まることがなかった。一方パンジーは同じ期間ほぼ成長しませんでした。 - 耐寒性の違い
本格的に気温が下がる12月後半にかけても、ビオラは耐寒性があるようで僅かずつですが成長していました。それに対し、パンジーは植え付け時から姿がほぼ変わらず、寒さで枯れることは無いものの成長は完全に止まってしまいました。
また、2月に気温が少し上がってきたときもビオラはいち早く成長を開始し、反面パンジーは3月に入るまで大きくなりませんでした。
以上のことから、ビオラはパンジーより耐陰性と耐寒性が高く、春までにより成長する結果になったのだと思います。
パンジーの生長期間を十分とるには、10月ごろに植え付けて、冬までに少しでも苗を大きくする方法もありますが、
ではもう少し暖かい10月ごろに苗を植えてみればと思いますが、残念ながらパンジーとビオラは暑さに弱く、まだ気温が高い時期に植え込むと、ひょろひょろと背ばかり伸びて貧相になり徒長しやすくなります。
そのため、半日陰では耐陰性と耐寒性で優位にあり、育ちやすいビオラがより適しているというのがわたしの結論です。
まとめ:半日陰ならビオラがおすすめ

5年間の栽培経験から、半日陰の環境ではビオラの方が安定して美しく咲くと感じました。もちろん、どちらも完全な日陰には適さないため、少しでも直射日光が差し込む場所を選ぶことが大切です。
また、冬季は雪に埋もれないようマルチングなどで防寒対策を施すこともおすすめします。
半日陰でも春にカラフルなお庭を実現したいと考えるガーデナーの方は、まずはビオラを試してみるとよいでしょう。限られたスペースや環境の中で、自分だけの栽培方法や工夫が見つかるはずです。
最初から日陰では無理と諦めず、まずは1鉢のビオラから試してみることをおすすめします。
我が家も東向きベランダで午前中しか日が当たらない半日陰ですが、創意工夫をしてガーデニングを楽しんでいこうと思います。