冬から春にかけての長い期間、色鮮やかに咲き誇るパンジーとビオラ。
豊富な花色と育てやすさで大人気のお花です。
またあまり日光が射さない半日蔭でも咲く花として紹介されています。
しかし本当に半日蔭でパンジーとビオラは咲いてくれるのでしょうか?
そして半日蔭でよりたくさん綺麗に咲くのはどちらなのか興味を持つ人も多いと思います。
今回は、まお太の5年間の栽培経験から、パンジーとビオラどちらが半日蔭に適しているかとその理由についてまとめました。
パンジーとビオラの違い
園芸店で見比べても、どちらがパンジーでどちらがビオラか見分けられる人は少ないのではないでしょうか?
まず結論から言うと、パンジーとビオラは同じ花です。
学術的には、この二つに明確な区分も大きな違いも無いのです。
元々は19世紀頃に野生のスミレの交配品種としてパンジーが生まれ、その中で花径の大きいものをパンジー、小さなものをビオラと呼んで区別するようになったそうです。
現在では一般的に花径が5㎝以上のものをパンジー、2~4㎝のものがビオラと呼ばれています。
また花数にも違いが有り、多花性で鉢から零れるようにたくさんの花をつけるビオラに比べると、パンジーは花数が少なめです。
そして日陰ガーデナーにはとても重要な事ですが、ビオラのほうが若干の耐陰性が有ります。
パンジー | ビオラ | |
花数 | 少なめ | 多花性で生い茂るようにたくさん咲く |
大きさ | 5㎝以上 | 2~4㎝くらい |
日光 | 陽当たり大好き。耐陰性はあまり無い | 陽当たり大好き。ただし耐陰性があるので、 ある程度日光があれば成長が可能 |
さて、まお太は当時こんなことを全く知りませんでした。
伯母から「玄関前に花を植えてほしい、パンジーとかどうかしら」というふわっとした依頼を受けて玄関前ガーデニングに着手したのです。
日向と日陰って日照時間はどれくらい違うの?
まずは伯母家の玄関の環境を確認することにしました。
一戸建ての西北西玄関。向いや隣の家との距離が近く、パンジーとビオラの生育期の冬に午前中の日光は望めない。
正午から15時くらいの3時間は十分日が当たる。
植物は午前中に最も光合成が活発になるので、理想としては夕方より午前中に日光が当たるほうが効率よく成長できます。しかし当たらないものは仕方がない。
ここで、日向と日陰の日照時間が、実際にはどれくらい違うのかを調べてみました。
日向 | 半日陰 | 日陰 | |
直射日光が当たる時間 (1日あたり) | 6時間以上 | 2時間以上 またそれ以外の時間は明るい日陰 | 2時間未満 |
諸説あるのですが、平均すると上の表のような区分けでした。
他にも半日陰の定義で『木漏れ日程度の日差しが一日当たる場所』というのが有るのですが、これは個人の感覚に左右されやすいので分かりやすく直射日光で考えることにします。
これら条件を照らし合わせると伯母宅の玄関の場合、午後から日の当たる半日陰でした。
5年間の栽培の結果、半日蔭ではビオラが多く咲く
伯母宅にパンジー・ビオラを植えることにした最初の年、まずは大輪のフリル咲きパンジーと小輪のビオラを用意しました。
出来るだけ大き目の鉢やプランターと玄関先の花壇へ、11月後半に植え付け完了しました。
成長の経過は次の表のようになりました。
パンジー | ビオラ | |
12月中旬から1月 | 植え付け時から特に変化なし 1株当たり2輪程度の花を付けている | 横に一回り大きくなる 1株当たり5輪程度の花を付けている |
2月 | 少しずつ横に広がり始める 1株当たり3輪程度の花を付けている | 更に横に広がっている。 1株当たり10輪程度の花を付けている |
3月から4月 | 植え付け時から1回り大きくなる 思ったほど大きくならなかった為、土がかなり見えている状態 1株当たり6輪程度の花を付けている | 植え付け時から2回り以上大きくなり、土が全く見えないほどびっしり茂っている 全ての株が数えきれない程の花を付けている。 |
パンジーは1株当たりの花数は少ないものの、花自体は一つ一つが大輪で近寄って鑑賞すると綺麗です。
ただ玄関先や庭のお花は、近くよりは少し離れたところから引きで見るほうが圧倒的に多いんですよね。
そこで改めて離れたところから観賞すると、ビオラはたくさんの花が付き色鮮やかで見ごたえがあります。
それに対しパンジーは花より緑が目立って心持ち寂しい印象になってしまいます。
ちなみにこの翌年と3年目も違う品種のパンジーを植えてみたのですが、結果は同じでした。
止む無く伯母宅の花壇からパンジーの選択肢は消える事となったのです。
では、なぜ同じ環境で育てたにもかかわらず、パンジーとビオラに大きな差が出てしまったのでしょうか。
何故パンジーは半日陰で咲きにくいのか
そもそもパンジーとビオラは両方日光が大好きな花です。
ですが、よくよく調べるとビオラには若干の耐陰性が有り、パンジーには耐陰性が有りませんでした。
その結果半日陰の環境ではビオラに比べパンジーはあまり成長することが出来なかったのです。
更にもう一つビオラに有ってパンジーに無いものが有りました、それが耐寒性です。
パンジーにも耐寒性がありますが、成長に適した温度がビオラよりもやや高いのです。
真冬でも少しずつ成長し続けるビオラに比べると耐寒性が劣るパンジーは真冬に成長がほぼ止まってしまいます。
苗の植え付け適期が11月から12月頃の為、ビオラより耐寒性の低いパンジーはスタートダッシュで著しいハンデを負っている状態なのです。
ではもう少し暖かい10月ごろに苗を植えてみればと思いますが、残念ながらパンジーとビオラは暑さに弱く、まだ気温が高い時期に植え込むと、ひょろひょろと背ばかり伸びて貧相になり徒長してしまいます。
日当たりの良い場所なら冬にあまり成長しなくても春になってから爆発的に成長して巻き返してくれるのかもしれません。
しかし半日陰の場合、冬の間ゆっくりとでも成長し続けたビオラに比べるとパンジーは最盛期にかなり見劣りしてしまいました。
耐陰性と耐寒性。この二つの要因から、半日陰ではビオラよりパンジーは咲きにくいと考えられます。
結論:半日陰により適しているのはビオラ(ただし完全な日陰は不向き)
まお太の5年間の栽培経験から、半日陰でも綺麗に開花してくれるのはビオラという結果になりました。
ただ、ビオラに耐陰性があるといっても限度があり、元々が日光の好きな花ですので日光が全く射さない完全な日陰には適していません。
同様に耐寒性があっても、雪でおおわれてしまうような場合は軒下に移動させるなど防寒対策をしましょう。
1年草の中でもビオラは強健でとても育てやすい品種です
半日陰の場所で春の綺麗なお花を楽しみたいという方は、最初からここでは咲かないと諦めずに試しに1鉢から育ててみてはいかがでしょうか。